近年、建設業界では長時間労働やそれに伴う人材不足が大きな課題となっています。これらの問題を解決するためにITの力を取り入れ、その動きを業界全体に広めていこうとしている会社があります。それが、今回私たちが取材した「株式会社クロスティホールディングス」です。
株式会社クロスティホールディングスは、脱炭素社会の実現と、建設DXによる企業成長の両立が評価され、第1期札幌SDGs先進企業として認証されました。
今回の取材では、どのようにして建設業とDX(デジタルトランスフォーメーション)を融合させ、課題の解決に取り組んできたのかを掘り下げてきました。
三方善(さんぽうぜん)から伝わる企業理念
クロスティホールディングスの企業理念は「三方善」といいます。この言葉は、売り手は利益を上げ持続可能な経営をし、買い手は商品やサービスに満足し、世間に対しても社会貢献や環境問題の配慮などでいい影響を与えるという、自社に関わる人たちが「善く」なって欲しいという意味を持ちます。
クロスティホールディングスは、かつて業界内で常態化していた長時間労働などの問題に対しDXの力を活用し、「社員ファースト」への思い切った方針転換を行いました。これにより、働きやすく持続可能な経営を実現しています。また、住宅は何十年にもわたって顧客と付き合うものであるため、品質の確保はもちろん、企業として継続的なアフターサポートを提供できることが、顧客満足度を高めるうえで不可欠です。効率的で持続可能な経営を実現することで、社員の働きやすさと顧客満足の双方が高まっています。さらに、クロスティホールディングスでは育成したDX人材を他社に派遣することで社会貢献もしています。まさに、社員とその家族、顧客、取引先の「三方善」が実現されていると思いました。

建設業界の「アタリマエ」をぶっ壊せ
前述のとおり、クロスティホールディングスでは日々DXの推進に取り組んでいます。具体例を挙げていくと、まず管理会計のソフトを取り入れ、売上高などを管理するだけでなく、従業員の労働時間や生産性も可視化。これにより仕事の進捗なども把握できるようにしていきました。また、建設業界では依然として書類やFAXを使ったやり取りが主流ですが、同社ではそれらをソフトウェアに置き換えることで効率化を実現しています。DX化を進めることで、残業時間を全体で年400時間削減することができ、今まで残業代に充てていた予算をボーナスとして従業員に還元することに成功しました。さらに、そのノウハウをソフトウェアとして他社に提供すれば、地域に根ざした建設業の枠を超え、全国に広がっていける可能性があるとのことでした。一方で、グループ会社間ではDXの浸透度に差があるのも事実であり、意識のばらつきをどう埋めていくかが今後の課題とされています。
また、クロスティホールディングスは環境保護活動にも力を入れており、本社オフィスの屋上にはソーラーパネルを設置。使用電力の2-3割をまかなっているほか、冬場は地下水を利用した融雪溝を利用し除雪作業をしているそうです。
地域と連携したIT人材育成への挑戦
クロスティホールディングスでは、前述した自社のDX推進に加え、公立はこだて未来大学の高度ICT演習という活動を支援しており、産学連携を通じて道内のIT人材育成にも挑戦しています。自社グループの1つである輸入壁紙販売店の社員が全面協力のもと、課題提供や店舗見学会を行い、自社IT部門からは技術支援を実施して、お客様の壁紙選びをサポートするアプリの開発に挑みました。
輸入壁紙は日本の壁紙よりも個性が強く、印象的な商品が多いからこそ、「世界で一つしかないような家に住んで気分が上がり、住んでいる人が家に愛着を持ってくれると嬉しい」と林社長はおっしゃっていました。
学生の中には、この経験をきっかけに起業した方も出てきたとのことで、社内で構築したDX手法やIT人材育成のノウハウが、地域社会の成長や自社の新たな強みに繋がっていると感じました。
取材を通じて
今回お話を聞いて感じたことで一番印象に残ったことは、「感謝」の気持ちを大事にしてお仕事をされているということです。やはり地域と強く結びついている建設業というお仕事のため、お客様だけではなく地域の方々を含めかかわっているすべての人たちに感謝を伝えて、地域に愛される企業でありたいという思いが伝わってきました。(藤木)
取材の中で、私が「これまで色々な事業をされてきて、これから新しい事業を始めるならどのような事業に挑戦してみたいですか。」と質問をしたところ、林社長は「夏限定で社員の子供たちを交えてかき氷屋さんを開き、子供たちに物を売ることやお金の動きを学んでもらう活動をしたい」とおっしゃっていました。私は、予想外の答えに驚きました。林社長は自分にとっての利益より、社員の方や地域の人達に感謝の気持ちをもち、地域貢献を大切にしている方だと取材を通して強く思いました。(原)
今回の取材を通して、株式会社クロスティホールディングスは人々に感謝をし続けて成長している会社ということが伝わりました。そしてまだまだ成長し続けることができる企業なのだと思います。社長の人柄や会社の雰囲気が良く、地域の人達に好かれているのがよく伝わってきて、三方善の意味や企業理念を深く理解することができました。(窪田)